グアーガム分解物の健常高齢者の認知機能に対する効果
腸は脳機能の調節にも影響を与えることが報告されており、腸-脳軸の分野は活発に研究が進められています1)。
脳機能の一つとして注目される認知機能について、グアーガム分解物の摂取による検証例をご紹介します。
Abeらの報告において2)、健常高齢者61名を対象とし、グアーガム分解物の摂取による認知機能への影響が検討されています。Cognitrax testを用いた認知機能検査の結果においては、認知機能の指標の一つである視覚記憶力についてグアーガム分解物摂取12週間後でプラセボ群と比べて有意な改善効果がみられました(図(a))。
POMS-2を用いた気分の主観的評価においては、プラセボ群では有意な変化がみられなかった一方、グアーガム分解物摂取群では摂取前と比べて摂取後は活気や活力のスコアが有意に向上し、混乱と当惑のスコアが有意に低下しました。
併せて実施された睡眠の質に関する調査(OSA-MA睡眠調査票)においても、グアーガム分解物摂取により起床時の眠気が改善されるという結果が報告されており(図(b))、グアーガム分解物摂取による腸内環境の改善が健常高齢者の認知機能、特に視覚記憶力が良好に維持される可能性が示されており、高齢者の活動的で質の高い生活に寄与することが期待されます。
作用メカニズムの一つとしては、腸管バリア機能の強化を介した体内への炎症物質の流入抑制が関与している可能性が挙げられ、メカニズム解明も含めて引き続き知見の深化が進められています。
参考文献
1) Liu L, Huh JR, Shah K.:EBioMedicine,77,103908(2022).
2) Abe A, Kapoor MP, Morishima S, et al.:Nutrients,16,1211(2024).