【学術Topic】 ”グアーガム分解物” のアルコール性脂肪肝の改善効果
グアーガム分解物のアルコール性脂肪肝改善効果について評価した結果をご紹介します。本内容は、学術誌『Journal of Gastroenterology and Hepatology』にオンライン掲載されています。
✓ アルコール性脂肪肝*1モデルマウスを用いた試験により、グアーガム分解物(グアー豆食物繊維ともいう)を摂取することで脂肪肝が抑制されることを確認
✓ グアーガム分解物の効果により腸内細菌叢を改善し、有用な代謝産物の産生を促すことで効果をもたらしたものと推察される
研究方法と結果
腸内環境を改善する食品素材として知られているグアーガム分解物をマウスに給餌し、エタノールを投与した際の肝臓と腸における影響を評価しました。肝臓においてはグアーガム分解物給餌によって脂肪の蓄積が抑制されており、腸内においては有用菌として知られるBifidobacteriumの増加や有害菌といわれるStreptococcusの増加抑制がみられたほか、有益な生理効果を持つと報告されている短鎖脂肪酸*2のうちの酢酸が増加していることが確認できました。また、相関解析により、特にBifidobacteriumの増加と、その代表的な代謝産物である酢酸の増加が肝脂肪の蓄積抑制に関係していることが示唆されました。
1*アルコール性脂肪肝
アルコールの過剰摂取に起因した脂肪肝であり、アルコールの分解に伴って合成された中性脂肪が肝細胞にたまった状態を指します。放置してしまうと肝硬変などの疾患に進行してしまう恐れがありますが、自覚症状が無いために予防が難しいという面もあります。
2*短鎖脂肪酸
食物繊維やオリゴ糖などを腸内細菌が発酵してつくる酢酸・プロピオン酸・酪酸などの有機酸です。消化管のエネルギー源となり、バリア機能を強化し、消化管の運動を調節するなど、腸内環境の維持に重要な役割を果たします。また、腸から吸収されて全身のエネルギーとして使われたり、免疫や糖代謝・脂質代謝を調節したりとさまざまな機能を有します。
発表雑誌
掲載誌:Journal of Gastroenterology and Hepatology
掲載日:2024年9月23日
論文タイトル:Partially hydrolyzed guar gum suppresses binge alcohol-induced liver fat accumulation via gut environment modulation in mice
著者:森島 爽、安部 綾、岡本 沙季、カプール マヘンドラ、大角 将秀、小田 真知、大久保 勉、小関 誠、西尾 昌洋、井上 亮